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16/雨宮デザイン事務所 雨宮育美「デザイナー&クリエイターズネットワーク」登壇者の紹介
1日前
デザイナー&クリエイターズネットワーク登壇者の紹介です。
今回は雨宮デザイン事務所の雨宮 育美さんです。
(登壇日:2026年1月20日)

雨宮 育美
雨宮デザイン事務所
デザイナー
1.系譜と今
こんばんは、雨宮育美と申します。
本日はよろしくお願いします。
私は普段、主人と2人でロゴの制作やホームページ制作などのデザインを行っています。クライアントの依頼に応じてチームを組んでデザインを制作することもあります。
簡単にプロフィールからお話します。
山梨県で生まれ育ち、高校卒業後は現ロンドン芸術大学に進学しました。大学では、デザインではなくペインティング(絵画)を学びました。海外での生活を通して、「日本の伝統工芸に関わりたい」という思いが強くなり、帰国後は地元の和紙メーカーに7年間勤務しました。
当時は海外課に所属し、商品デザインに加えて、海外とのやり取りや営業、通訳、生産の管理、百貨店での売り場デザインなど、幅広い業務を担当させていただき、多くのことを学ばせていただきました。
その後、体の不調をきっかけに働き方を見直して、インドネシアのバリ島でヨガインストラクターの資格を取得し、韮崎の棚田のあるエリアにスタジオを作りました。約2年間ですがフリーランスでデザイナーの活動を続けながら、やりたいことを叶えつつ生活していました。その後、主人と一緒にデザイン事務所を始めました。
2.デザインで表現できること
ここからは、クライアントワークの一部をご紹介出来たらと思います。

市川三郷町のくわ茶ブランド「ハンさんのおいしいくわ茶」です。
「ハンさんのおいしいくわ茶」では、ネーミング、ロゴ、パッケージ、商品全体の世界観まで一貫して再設計し、旧来の見せ方を刷新しました。
この商品は、ハンさんご夫妻が経営される、市川三郷町でくわの葉の生産から加工まで一貫して行っている会社の製品です。
デザインを担当させていただく前は、別の商品名で販売をしていましたが、その世界観を刷新する依頼を受けました。
依頼をいただいてからは、一年かけてハンさんご夫妻と話を重ね、デザインを作りあげました。
ハンさんご夫妻と話を重ね、色々な話を聞き、さらにくわ茶についてリサーチを行う中で、かつてのような緑茶と同様の親しみやすさを感じるデザインにしていくこととしました。
これは、すでに多くの人に馴染みのある緑茶に比べ、まだくわ茶は多くの方になじみのない、新しい品だと思ったからです。
なるべく身近なものに感じていただくため、馴染みのある緑茶に近いデザインをビジュアルに落とし込みました。
ハンさんご夫妻の会社は当初、夫婦で運営する現在と比べると小規模な体制でした。なので、まずは市販容器にラベルシールを貼るところから始まりました。売り上げが上がると、専用パッケージの制作やボトル・印刷仕様の更新など、ブランドの成長とともに、仕様もアップデートし続けています。
現在は大勢のスタッフとともに自社ECや楽天、QVCでも展開され、より多くの人に届いています。
3.ブランドを育てるデザインのあり方
山梨の中小企業や個人事業主のデザイン支援に関わる中で、いくつか気づきがあります。

先ほどのくわ茶の事例にも当てはまりますが、多くの場合、最初から費用をかけることは困難です。パッケージデザインと言っても、始まりは既製の袋や容器にラベルシールを貼るなどのスモールスタートで、リスクを抑えながら段階的にデザインの領域を拡げオリジナルへ移行していく設計が大切だと感じています。
また、商品の素材や会社の性質にできるだけ手を加えず、美しくシンプルに表現することで、社内で運用してもブランドイメージを維持できるデザインを作れるように心がけています。
さらに、外部デザイナーがすべてのデザインに携わり続けるのは難しいので、社内でチラシやPOPを作る場面も想定し、「ここは守ってほしい」という色・文字・トーン・ルールを整理して渡すことで、ブランドの印象が崩れないことを大切にしています。
県内のものづくり企業は、自社で製造し、自社ブランドで展開するケースが多いです。だからこそ、ブランドが成長してデザインを少しずつアップデートしていく過程に長く伴走できることに、デザイナーとしての大きなやりがいを感じています。


直近では、南アルプス市の妙了寺の活性化プロジェクトに関わっています。妙了寺はかつて栄えた大きなお寺なのですが、最近は訪れる人が減少していたところ、新たな住職が岩手から月3~4回通いながら活性化に取り組んでいます。
現在はリーフレットとホームページを制作しており、今後はお寺を拠点にしたイベント企画に挑戦したいと考えています。
4.山梨でデザインする心地良さ

山梨でデザインの仕事をすることについて、事務所から見える景色や自然の変化を感じながら、生活と地続きの形で仕事ができて嬉しく思っています。県内のデザイナー同士の横のつながりも一昨年ぐらいから増え、情報交換や一緒に仕事ができるようになってきたことも、楽しく感じています。
5.デザインと対話と葛藤 (Q&A)
-「ハンさんのくわ茶」を例に-
Q:デザインが与えるインパクトや価値は伴走するプロセスの中でどのように感じていますか?
A:全体的なデザイン変更の依頼の場合、クライアントの多くは課題や問題に直面している場合が多いです。なので、売り上げとして結果が出た時にはデザインの価値を感じてもらえると思います。
ただ、デザインを刷新することが必ずしも、売り上げに貢献すると契約の前に確約することが出来ないので、デザインに係る時間やお金の面の話し合い・説明の方法については課題として考えていきます。
また、デザインの力だけでなく、営業、商品力、物語などが総合的に組み合わさることで成果につながると実感しています。
Q:クライアントに世界観を提示したり、広めたりするのはどの段階から?
A:世界感は最初に提示するようにしています。ただ世界感を統一していくに当たって、何度も足を運んで、ハンさんご夫妻だけでなく、製造されている方や営業されている方の話を聞くと、突然デザインが変わるとお客さんを困らせてしまうといった意見もあったので、長い時間をかけてデザインをしていきました。
Q:デザインに施されている鳥は鳳凰ですか?
A:もとは、ハンさんの奥様のご家族がくわの栽培をしており、会社を立ち上げたみたいなのですが、倒産しかけていた会社をハンさんが継ぐことになったようです。そんな時に、亡くなったハンさんのお父様が、鳳凰に乗ってくわ畑と富士山の近くを飛んでいる夢を見たというエピソードから、夫婦の鳳凰をデザインしました。