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01/株式会社DEPOT 宮川 史織「デザイナー&クリエイターズネットワーク」ご登壇者の紹介
2025年02月05日
デザイナー&クリエイターズネットワーク登壇者のご紹介です。
今回は株式会社DEPOTの宮川 史織さんです。
(登壇日:2025年2月5日)

宮川 史織
・プランナー
・クリエイティブディレクター
1.私がその一人になればいい
私は「株式会社DEPOT」で代表取締役、プランナー・クリエイティブディレクターという立場で仕事をしています、宮川と申します。出身は山梨県・甲府市です。大学進学で京都に行き、そこで建築やデザインについて4年間学びました。
そこで京都の「街のあり方」が魅力的で、「どうしてこんなに魅力的なんだろう。」と考えました。
その理由のひとつとして感じたのが、まちに住む人たちの“誇り”でした。みなさん、自分たちの暮らす場所に誇りを持っていて。古いお店が軒を連ねる中にその歴史を残しつつ、新しいお店が自然に入り込んでいく。まるで新陳代謝のように、うまく循環している。それを支えているのが、その地域に住み、関わる人たちなんだという実感がありました。そのとき、ふと思ったんです。「じゃあ、私の地元・山梨は、誰がよくしていくんだろう?」と。
だったら、「自分が帰って、その一人になればいい。」そう思い、Uターン就職を決めました。
2.「軸のある表現」の手助け
私たちの会社では「強い根と、美しい枝葉をつくる」というコピーを掲げています。これは、事業の本質をいっしょに見つめ直し、そこにクリエイターたちの力を掛け合わせることで、軸のある表現(施設事業、商品)を制作していく手助けをする、という姿勢を表したものです。

具体的には、CI・VIなどの企業理念、コンセプトの構築やロゴの開発といった「根っこの部分」の支援から、PRツール(パンフレット・ウェブ・パッケージなど)、空間デザイン(店舗・建築ディスプレイ)など、広範囲な領域の制作をチームで行っています。
もちろん、私自身がすべての制作物をデザインしているわけではありません。私は主にプランナー・ディレクターとして、企画や方向性の設計を担いながら、プロジェクトごとに最適なクリエイターとチームを組み、案件ごとに「この人とやるのが一番いい」と思える方々と一緒に形にしていく、そんな体制をとっています。
さて、今日は特に「デザイン」の部分について触れたいと思います。 私たちが関わっているデザインの領域は、ざっくり3つに分けられます。

事業例を1つ挙げますと、北杜市白州にある公共施設「べるが」。温泉やキャンプ場などを備えた施設ですが、指定管理者から「リニューアルを図りたい」という相談をいただきました。このプロジェクトでは、マネージャーや支配人など現場の方々と一緒にコンセプトづくりからスタートしました。限られた予算の中で「どこに投資をすれば、ブランド価値を高め、経営的な成果にもつながるか」をチームで徹底的に議論しました。パンフレットや Web、レストランメニュー、館内サインまで、トータルに制作を担当しました。

ただ、公共施設ならではの課題もあり、私たちがつくったデザインや仕組みを、運営側に引き渡したあとの継続性―たとえば予算や人材の問題で、どうしても形が変わってしまう部分があります。それでも、こうした公共の現場に深く関わることから、私たち自身も多くの学びを得ることができました。

他にも、山梨市の「笛吹川フルーツ公園」では、再ブランディングに際して「五感を楽しむテーマパーク」というコンセプトを提案し、体験型農業やアクティビティ全体を言葉で包み直しました。サイン看板については、フルーツを想起させながら、再ブランディング前から存在する空間の雰囲気を壊さない工夫もしています。
3.愛の総量を増やすこと
私たちが取り組んでいるのは、単に「デザインを制作すること」ではなく、事業主やクライアントの目指す姿の根幹を掘り下げることを大切にし、クリエイターに「彼らの思い(気持ち)に寄り添ったデザイン」を依頼することで、事業全体の構築を支える一役として動いています。
これまで「ブランディング支援」という言葉を使ってきましたが、少しわかりづらい・伝わりにくい言葉でもあると感じています。そこで、私たちが近年掲げている定義があります。
それは——
ブランディングとは、
愛の総量を増やすこと。
ブランドに関わるすべての人たち、社員、取引先、ユーザー、地域の人たち。その一人ひとりが、「好き」「応援したい」という気持ちをどれだけ持てるか。その“愛着”の総量こそが、ブランドの強さであり、そのための支援が私たちの仕事だと思っています。
そしてもう一つ強く感じているのは、「自分自身の愛」がとても大切だということ。自分の事業を、なぜやっているのか。何を目指しているのか。納得のいく意思がないまま、見た目だけ整えても、本質的な発展にはつながらないと、日々実感しています。
地方では、広報やブランディングの専任がいない企業がほとんどです。だからこそ、私たちのような存在が、言葉や企画の力で寄り添っていく意味があるのだと思っています。
このデザインセンターという拠点が、地域全体のリテラシーを底上げしていく場所になればと願っていますし、みなさんと一緒に、もっと良い形をつくっていけたらと心から思っています。