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12/RED. 五味 竜康「デザイナー&クリエイターズネットワーク」ご登壇者の紹介

2025年06月19日

デザイナー&クリエイターズネットワーク登壇者のご紹介です。

今回はRED.の五味 竜康さんです。

(登壇日:2025年6月19日)

五味 竜康

「RED.」代表

・アートディレクター

・グラフィックデザイナー

・ヴァンフォーレ甲府サポーター

1.デザインはプロレス

 今年の4月から、「RED.」という屋号でアートディレクター、デザイナーとして活動しています。​

 私の経歴を紹介します。1997年に山梨の総合メディア企業・山日YBSグループに入社、山梨日日新聞社、デジタルデビジョン、山梨文化会館、アドブレーン社とグループ内を異動し、今年3月に退職して今に至ります。​

​ 時々、「あなたにとってデザインとは何ですか?」と聞かれることがありますが、私は「デザインはプロレスだ」と伝えています。私のデザインに対する考え方の原点は、小学生の頃に夢中になった「プロレス」です。昔からプロレスが好きで、アントニオ猪木さんに憧れていた私は、リング上で鍛えた身体一つで人を沸かせ、人の心を動かすプロレスラーたちの活躍を見て、「あんな風に多くの人を沸かせる人になりたい」という思いを抱きました。それが今のデザインという仕事に向き合う姿勢となっています。

  アドブレーン社時代は、新聞広告をメインに、ロゴ、商品、アクセサリーなど、さまざまな分野のデザインをさせていただきました。多い時で年間約700本ぐらいの広告をデザインしていました。​

 私が経験してきた中で、山梨デザインセンターに通じる取り組みとしては、2012年から関わった、山梨の活性化や流通拡大を目指す「カガヤカ」というプロジェクトがあります。​山日YBSグループ140周年記念の事業コンテストで採択されたこのプロジェクトは、​伝統工芸や産業に新たな息吹を吹き込むとともに、マスメディアとしての視点を生かした認知拡大を目指すという取り組みでした。​

 このプロジェクト中の一つとしては、「YOROI」というアクセサリーブランドを立ち上げ、デザインもしました。この商品は伊勢丹メンズ館でも販売させていただき、私自身も店頭に立って接客をするという貴重な体験もでき、素晴らしい経験を積むことができました。そのほかにも、ジュエリー製品の新規開発や、甲州だるまの色展開(1色しかなかったものを30色以上展開)などさまざまな事業を行いました。​

 一方、ライフワークデザインと言っても過言ではないのが「ヴァンフォーレ甲府」のデザインです。チームのデザインサポーターとして、各種デザインをさせていただき、ここ数年は夏季限定ユニフォームのデザインも担当しています。Jリーグには日本全国のサッカーチームが属しています。ユニフォームデザインは山梨県のPRにもなると考えていますので、デザインコンセプトには、常に山梨にちなんだものを入れるように心掛けていま す​。

2.#甲府に力を

 ヴァンフォーレ甲府は2022年、天皇杯を制し、日本一となりました。その結果、日本の代表としてACLアジアチャンピオンズリーグに出場することになりました。​喜ばしいことでしたが、反面、ヴァンフォーレ甲府のホームスタジアム小瀬は各種要件を満たさないため、試合を開催できないという問題があり、東京の国立競技場で実施することになりました。しかし、平日夜の試合で集客が厳しいことが想像されたため、クラブからは「どうにかこの状況をPRして、集客に繋げる方法はないか」と相談を受け、いかにお客さまを集めるかを検討しました。​

 そこで行ったのが「#甲府に力を」というハッシュタグを作り、デザインとともにSNSほかで発信することでした。「ヴァンフォーレ甲府を助けるため、国立競技場にぜひ応援に来てください」というメッセージとして、SNSはもちろん、東急田園都市線渋谷駅の17mの駅貼りポスターや、アドトラック、渋谷のビジョンなど、広く広告展開を行いました。 ​

 その結果、クラブの当初の想定である3,000人を大きく上回る約1万6,000人のサポーターが国立競技場に集まり、ヴァンフォーレ甲府は見事、予選を勝ち抜きノックアウトステージに進出することができました。​

 ​デザインだけではなく、SNSを活用して拡散していくことが様々な動きにつながり、クラブに貢献できていることを実感できましたが、これもヴァンフォーレ甲府というクラブが培ってきた歴史と印象の良さや、スタッフの皆様の情熱あってこその企画だと思います。また集まっていただいた多くのサポーターの皆様にも心から感謝をしています。

3.デザインで人を動かす

 2023年の第50回信玄公祭りのデザインも私にとってのターニングポイントの一つでした。初挑戦のデザインコンペでしたが、採用していただいたことは非常に自信となりました。

 イラストは世界的に活躍するアーティスト・田村大さんにお願いし、菱丸や馬などすべて描いてもらいました。​あえて写真を使わなかったのは、時間的な制約もありますが、田村大さんのイラストで、冨永愛さんの信玄公は「こんなにカッコよくなるんだ」という期待を煽り、「実物を見てみたい」という気持ちに訴えかけることを考えました。​

 祭りの当日、実際に目の前に現れた「冨永信玄公」は、想像以上の迫力と美しさで、鳥肌が立ったことを覚えています。​信玄公祭り全体の来場者数は過去最高の23万5,000人を記録しました。これにはさまざまな方の尽力や、冨永愛さんの魅力が大きく影響したと思いますが、自分がデザインしたポスターも「実際に行ってみたい」と多くの方の心を動かせたのではないかと思えた経験となりました。​

​ これらの仕事は「デザインで人を動かせた」と強く感じることができました。

 デザインには、ものを買うとか、その場所に行くという行動を起こさせる力だけでなく、人の心を震わせる強い力があるのだと改めて実感しました。​

4.UFOと新聞

 私自身の個人的な活動も紹介します。1975年の2月23日は、「甲府UFO事件」が起きた日です。​甲府の葡萄畑にUFOが着陸し、降りてきた宇宙人に小学生が肩を叩かれるという驚くべき事件でした。私の誕生日はその翌日の2月24日。私の誕生アルバムには「甲府にUFOが降り小学生の肩を叩く!」とで書いてあり、ずっと気になっていました。

 いつの日かこの「甲府UFO事件」を何とか企画にしたいと思っていましたが、50周年を機に仲間が集まり、一般社団法人が立ち上がり、宇宙人の着ぐるみを製作し、2月23日を日本記念日協会に「甲府UFOの日」として登録しました。​

 さらに事件現場近くに看板や顔出しパネルを設置し、UFOの聖地として整備しました。また、雑誌の「月刊ムー」の三上編集⻑のトークイベントも甲府で開催することができました。​

 もう一つの野望が、「山梨日日新聞」と「月刊ムー」のコラボです。新聞というノンフィクションの世界と、月刊ムーのフィクション(私はフィクションだと思っていませんが)の2つの世界を、交わらせることは果たして可能なのか―。構想から4年ほどかかりましたが、多くの皆様の力を借りて、特集として甲府UFO遭遇事件を深掘りし、実現することができました。

 このUFOの事件に関しては、苦手な方もたくさんいらっしゃると思いますが、私はエンターテイメントとして捉え、どうにか面白く盛り上げていきたいという想いがあります。​デザイナーは発注される側なので、どうしても受け身になりがちですが、そんな中でも、デザイナーとして「これをやりたい」と、いかに主体性を持つかが重要だということを学んだ良い経験になりました。

5.デザインで生きる

 28年間の会社員時代にはおかげさまでこれ以外にも多くの経験をさせていただきましたが、「デザインで人を動かす」「デザイナーとして主体性を持つ」ことは、クライアント様にとっても有意義だと感じています。独立したこれから先も、自らのデザインで「人を動かす」ことを信念として、山梨発で実現できればと思っています。

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