澤田屋
山梨県甲府市向町
江戸時代末期、山梨県笛吹市石和町で菓子の卸問屋を生業としていた澤田屋。甲府盆地に壊滅的な被害をもたらした明治時代の大水害により甲府市へ移転した後、現在の本店を構える甲府市櫻町にて生菓子の製造小売業を始めました。
元祖「くろ玉」が誕生したのは昭和時代に入った1929年のこと。良質な青えんどう豆だけでつくった「うぐいす餡」を、ミネラル豊富な天然黒糖を使った「黒糖羊羹」で包み込むようにすばやくひたし、そっとすくいあげて完成させる漆黒の菓子は、100年近く経ついまなお、すべて職人の手によって生み出されます。豆本来の優しい味わいとコクのある黒糖、ふたつの甘みが互いを引き立てる風味は、発売当初から変わらない製法に支えられているのです。


原材料に“山梨らしさ”はないものの、「くろ玉」は“甲斐銘菓”として幅広い年齢層に親しまれてきました。趣のある包装紙に、武田信玄や柳沢吉保といった歴史上の人物を思わせる文言、山梨の旧地名、伝統工芸品名など、甲府にゆかりのある言葉や図柄が用いられていたことも、長らく馴染まれてきた由縁かもしれません。
2025年、約30年ぶりにリニューアルしたパッケージは、「くろ玉」のイメージを形成してきた要素を残しながら、次の時代にも存在感を保ってゆくという静かな熱意を感じさせています。外箱は、くろ玉が手づくりであることを直接的に伝える“丸”のモチーフを取り入れ、包装紙も澤田屋とくろ玉にまつわる言葉をスタンプした様式へリファインしつつ、黒と赤の印象的な組み合わせは踏襲。老舗の精神と新しい感性をつなぐブランディングが実施されました。
DATA
製品名
「くろ玉」
事業者
澤田屋
所在地
山梨県甲府市向町
デザイン
DEPOT、 トンボロデザイン
ウェブサイト

CONTACT
電話 055-223-1796 (平日 9:00~17:00)
選考委員のコメント
JUDGES’ COMMENTS
パッケージへ落とし込んだ点に、⽼舗の品格と現代性の調和が表れている。新しさを追うあまり本来の良さを損ねがちな領域で、伝統の核を守りつつデザイン言語を再構築し、くろ⽟らしさを際立たせた。売場でも贈答でも強い存在感を放つ、ブランドの未来を示す仕事。